かつて先輩より勧められた本で、チラシ制作に関わらず、デザイン全般に該当することが多く書かれていて、いまだに読み返したりする一冊です。
この本のカバーのそでの部分には
「チラシ制作を常用デザインの立場から解説しています」と書いています。
常用デザインとは聞き慣れない言葉ですが、「プロ、アマチュアの関係なく誰もができるデザイン」を指すようで、本書は身近なチラシに焦点を当てて書かれています。
プロとアマチュアの垣根を越え、誰もがデザインできる理由として本書の一節には
その中で、見逃してはいけない“あらゆるものの日用品化(コモディティ化)”がある。その中心的な役割を果たしているのがコンピューターである。〜中略〜プロとアマチュアの差は美的レベルの差だけになったと言える。この美的レベルの差はデザインの基礎の問題である。
とあります。つまり…
- IT化により製品に留まらず、技術や考え方にいたるまであらゆるものの日用品化が進んでいる。
- その代表格がパソコンで、昔にくらべて廉価で手に入る
- 扱いでわからないことはインターネットで簡単に調べられ、誰でも扱えるようになっている
よって、今やプロとアマチュアの差は美的レベルの差でしかない。そして、その美的レベルの差は基礎力の差であり、基礎を養えばアマチュアでも実用的なデザインができる。つまり誰もがデザインは作れる。と言った感じでしょうか。
また本書内の著者の名言が刺さるんですよね。
プロとアマの境界がない常用デザインこそ、これからの時代をクリエイティブなものに変えていく
デザインを通してチラシを学ぶのではなく、チラシを通してデザインを学ぶ
自分が作る作品を否定しないで欲しい。否定からは何も生まれない。
デザインは「幸せ」を届けるメッセンジャー
デザインは「幸せ」をメッセージすることで収入を得ている
デザインの中身は誠意だ
こんな名言もさることながら、この本の最大のメリットは
グラフィックデザインの基礎から企画、配布までを総合的にかつ戦略的に学べるところです。チラシデザインに焦点を当て、デザインの基礎が解説されていますが、その基礎はチラシデザインに留まらず、他のメディアデザインにも共通している部分が多いです。
例えば、デザイナーとして注意しなければならないチェックポイントとして
- テーマの確認と現実の観察
- 発想|アイディアは自分の記憶とのキャッチボール
- 表現制作|見る人のことを意識して、丁寧に制作
とあげられていたり、あらゆるデザイン制作の勘所が本書の随所にちりばめられています。
特にこれからデザイン方面に進もうとしている方にはおすすめします。本書にも「チラシ制作にはグラフィックデザインにおけるすべてが詰まっています」とあり、私もそれに同感です。また一枚絵の完成度を高めることは、他のメディア制作においても充分に役に立つものだと思っています。初版は2003年ですが、色褪せない一冊です。